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司祭からのメッセージ

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休  眠  打  破

 
牧師 司祭 サムエル 小林 祐二 




   東京の桜の開花宣言が3月21日になされました。この前日の昼過ぎ、教区「沖縄平和の旅」のメンバーと、沖縄はコザで昼食を食べながらテレビを見ていました。気象庁の職員が靖国神社で開花を調べている様子が実況されていましたが、ここ沖縄ではソメイヨシノではなくヒカンザクラで観測され、今年は1月10日に開花宣言済。全国ネットのテレビでは当たり前の光景とはいえ、遠く離れた沖縄で東京の桜が実況されていることを、一同で「実感ないね」と言い合いました。

 桜は気温の低い時期を一定期間過ごさないと開花に至らないのだそうです。種類によってその温度と期間は異なるようで、沖縄にソメイヨシノを植えても必要な寒さが足りずに開花せず、ヒカンザクラなら開花するというわけです。同じ理由で沖縄ではスギ花粉も飛ばないのだとか。このように、休眠状態にある種子や芽が活動しはじめるためには特定の条件があり、整うと「休眠打破」(眠気覚ましの飲料ではありません)に至るのだそうです。暖冬の方が植物にはやさしいとは限らず、ありがたがるのは一部の人間だけなのかもしれません。こんな不思議な仕組みが備えられた植物を通じ、改めて神様の創造のみ業に敬服しました。「何事にも時があり/天の下の出来事にはすべて定められた時がある…」(コヘレトの言葉3:1-)のです。

 わたしたちも、実は人生のうちに数え切れないほどの休眠打破を迎えています。文字通り夜寝て朝目覚めるサイクルのうちに。逆境から順境の間で。病の癒しのうちに。そしてやがて主による真の休眠打破への希望を抱きつつ、死を迎えます。人生の中でいわばちいさな死と復活の経験を積み重ねていると言えるでしょう。また教会暦も同様に、単に主イエスの死と復活を想起しているだけではなく、大斎節はこの世において死につながるようなこと、例えば沈黙、罪の自覚と謝罪、奉献など、華々しくもなく、人びとの目には負けとすら映るような行為へと招き、わたしたちが主の十字架に近づくことを促します。そして主のご復活を驚き祝うことにより、死から命への道、魂の休眠打破への希望を深めるのです。

 着任して1年が経ちました。引っ越しのあった昨年の春よりも落ち着いて桜を見ています。魂の成長を思い巡らせつつ。